8月11日 電車

これは昨日の帰宅途中の出来事である。
某は帰郷のための電車に乗って、『12番目の天使』を読んでいた。すると、足元にサッカーボールが転がってきた。はて?と目を上げると、そこには例の少年が指を咥えて立っていた。某と目が合うと少年はボールを蹴り出して、電車内を疾走し始めた。時刻は21時を回っていた。少年が一人で乗っている訳がないと思い、辺りに親の姿を探すが見つからず。仕方が無いので、少年を捕まえるために某は走り出した。奴は、体格を生かし乗客の間をすり抜ける。一向に捕まらない。乗客たちは某にばかり非難の目を向ける。奴は隣の車両に逃げ込む。某もそれを追って扉に飛び込んだところ、「切符拝見♪」と巡回していた車掌と電車内人身事故を引き起こす。少年の経緯を説明するが何故か信じてもらえず、約3年ぶりくらいに見知らぬ大人からの叱責を受けたが、終始土下座で何とか事なきを得た。その時、某は高校の部活以来に息を切らしていた。
目的地で下車すると改札外に少年を発見した。某は急いで切符を通そうとしたが、非常に折れ曲がっていたため、仕方なく駅員さんに切って頂かざるを得なかった。外に脱兎の如く駆け出るが、既に少年の姿は霞の如く何処かに消えた後だった。
非常に不快であったが、少々楽しくもある道中であった。