8月26日 公園

最近少年と仲良くなってきた。…とは言っても奴は相変わらず一言も喋らない。どこまでも果てしなく無口な奴である。

今日久方ぶりに街中を散歩した。これでもかというくらい散歩した。多分3時間は散歩した。 『夜のピクニック』を読みながら狂わんばかりに散歩した。
さすがに疲れて公園で園児と遊びながら休憩していると、前方の木陰から少年が現れた。奴がたいそう神出鬼没なのは毎度のことなので、流石にもう驚かなかった。奴を手招きで誘い込み、園児と一緒に遊ぶように促した。奴が大人しくそれに従い、園児と一緒に砂場で遊び始めたので、某はブランコに乗り、奴等を品定め…もとい観察することに徹することとした。
…だが、ふと妙なことに気が付いた。少年は園児たちに何度も話し掛けようとするが結局口を噤んでしまい、園児たちははなから少年を無視している。それどころか不注意に少年の砂山を踏み崩してしまうことも屡。しかも自らの行為の結果に全く頓着無く、謝罪の言葉一つ無い。
確かに少年は彼らよりも明らかに年長者だし寡黙なムッツリだが、これではあんまりである。某は少年の手をとり、肩を怒らせて帰っていった。
少年に、家は何処か?どうやって帰るのか?と聞くと黙ってバス停を指差した。その時ちょうどバスが来た。某は「いつでも遊んでやるからな」と言い、少年をバスに乗せた。
少年と某はお互いの姿が見えなくなるまで、大きく手を振り続けた。